単著が完成しました

 構想で5年、執筆で5年、およそ10年近くかかった単著が、この度ようやく完成致しました。刊行をお約束していた方々には、大変遅くなりましたが、こうして無事に完了のご報告ができることを心より嬉しく思っております。

 本書が完成に至るまでには、本当にいろいろなことがございました。本書は私が人生の道程で出会い、そのご縁のなかでいただいた多くのものに支えられることではじめて結実することができたものです。そのご縁のひとつひとつに思いを馳せながら、ここで改めて感謝を申し上げたいと思います。

 上柿崇英(2021)『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻)』 農林統計出版

  • はじめに
  • 序論――本書の構成と主要概念について

  • 第1部 時代と人間への問い――〈自己完結社会〉への目なざし
  • 第1章 「理念なき時代」における”時代性”
  • 第2章 人間学の”亡霊”と〈自立した個人〉のイデオロギー

  • 第2部 「人間的〈環境〉」の分析と人類史における連続性/非連続性
  • 第2部のための序
  • 第3章 人間存在と〈環境〉
  • 第4章 人類史的観点における「人間的〈環境〉」の構造転換

  • 第3部 「人間的〈生〉」の分析と〈社会的装置〉
  • 第3部のための序
  • 第5章 「人間的〈生〉」の分析と「〈生〉の三契機」
  • 第6章 〈生〉を変容させる〈社会的装置〉とは何か考

  • 第4部 「人間的〈関係性〉」の分析と〈共同〉の条件
  • 第4部のための序
  • 第7章 〈関係性〉の人間学
  • 第8章 〈共同〉の条件とその人間学的基盤

  •  上柿崇英(2021)『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(下巻)』 農林統計出版

  • 第5部 〈有限の生〉と〈無限の生〉
  • 第5部のための序
  • 第9章 〈自己完結社会〉の成立と〈生活世界〉の構造転換
  • 第10章 最終考察――人間の未来と〈有限の生〉

  • 補論1 残された課題としての〈文化〉への問い
  • 補論2 学術的論点のための五つの考察

  • おわりに
  • 付録

  • カテゴリー: 〈自己完結社会〉の成立, 本の紹介, 研究・学問 | 単著が完成しました はコメントを受け付けていません

    夢ナビ

    高校生向けの情報サイト「夢ナビ」に私の研究室の紹介が出ています。本当は講義を行う予定だったのですが、コロナウイルスの状況によりイベントは中止となりました。

    なお、リンク先のイラストは「夢ナビ」さんの方でご用意されたものなのですが、私であれば、おそらく絶対に口にしないだろう台詞を「地球さん」が語ってくれています(笑)。

    カテゴリー: 日常生活 | 夢ナビ はコメントを受け付けていません

    『現代人間学・人間存在論研究』第四号

    ご無沙汰しております。この度は、ようやく二年越しの『第四号』を刊行することができました。

    詳しいことは、「『現代人間学・人間存在論研究』第一期を終えるにあたって』」にも書いたのですが、『第四号』は、仲間たちとこのプロジェクトを始めてきて、「第一期」の締めにあたる大事な号でした。

    口先だけで何かをいっているだけで許されたのは20代まで、それをちゃんとした形にするのが30代の仕事と誓い合い、10年かけて取り組んできたプロジェクトが、ついに一つのひとつの区切りを迎えました。

    当初の目論みでは、実質的な執筆は『第三号』までで、『第四号』は総括的な位置づけとなっていたのですが、結果、まったくそんなことはなくて、「第一期」の締めに相応しい、非常に内容の濃い、実りあるものになったと思います。

    私も、そして一緒に闘ってきた仲間たちも、このプロジェクトを始めた当初には、その先に今回書いたような到達点が想定されていたわけではありません。これは5年あまりの執筆期間の間にそれぞれが必死に格闘してきた結果であって、同時に私たちは、それぞれにはっきりとした自らの思想的立ち位置を完成させたと思います。

    私の場合でいうなら

    • ①哲学的方法論としての「現代人間学」の整備、
    • ②西洋近代哲学に含まれる根源的な問題としての「存在論的自由」〈無限の生〉をめぐる考察、
    • 〈自己完結社会〉への分析や批判の先にあるものとしての〈有限の生〉の「世界観=人間観」の提示、
    • 〈世界了解〉の概念を媒介とした〈思想〉〈哲学〉〈芸術〉〈救い〉〈美〉といった人間存在の根源に関わる営為に対する一貫した説明、

    などだと思います。

    デジタル技術や生命操作技術がもたらす人間存在の揺らぎや、〈自立した個人〉を中心とした人間的理想の行き詰まりから始め、700万年に及ぶ人類史、「人間的な生」の根源、「人間的な関係性」の根源にまで踏み込み、人間の未来を見据えたひとつの「世界観=人間観」を提示すること、しかもそれを単なる海外の文献の「お勉強」としてではなく、時代を生きる一人の人間の〈思想〉として完成させること。

    内容に共感してもらえるかどうかは別として、ここまで書けることができて、本当に良かったと思います。

    『現代人間学・人間存在論研究』 第一期 第四号
    特集 存在の波止場

    • 『現代人間学・人間存在論研究』発刊によせて
    • 『現代人間学・人間存在論研究』第四号のための序(上柿崇英/増田敬祐)
    • 人〈生活世界〉の構造転換と〈自己完結社会〉の未来―〈無限の生〉と〈有限の生〉をめぐる人間学的考察(上柿崇英)
    • 存在の耐えきれない重さ―環境における他律の危機について(増田敬祐)
    • 波打ち際の大聖堂―計算に引き寄せられる世界のメディア論(吉田健彦)
    • 『現代人間学・人間存在論研究』第一期を終えるにあたって(上柿崇英)

    唯一残念なのは、40歳になるまでに、この成果を単著として刊行するところまではいけなかったことでしょうか。三人で単著を書いて、それらをシリーズ本として出版するという当初の目標は、残念ながら実現することは困難なようです。しかしそれぞれの形で単著計画自体は進んでいますので、これが終わって、ようやく本当の意味で「第一期」を終えることができるでしょう。

    末永くお見守りください。

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    『現代人間学・人間存在論研究』第三号

     原稿はすでにできあがっていたのですが、いろいろあり、印刷が遅くなっていた第三号です。

    (第二号の本文は、リンク先から読むことができます)

    『現代人間学・人間存在論研究』 第一期 第三号
    特集 信頼のゆくえ

    • 『現代人間学・人間存在論研究』発刊によせて
    • 『現代人間学・人間存在論研究』第三号のための序(上柿崇英)
    • 人間的〈関係性〉の構造と〈共同〉の成立条件―「ゼロ属性の倫理」と「不介入の倫理」をめぐって(上柿崇英)
    • この私を繋ぎとめるものは誰か―存在論的ノイズによる原初的共同性の基礎づけ(吉田健彦)

     

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