今年一年をかけて新たなプロジェクトを立ち上げてきましたが、その最初の成果が刊行されました。『現代人間学・人間存在論研究』は、現代に生きる人間を問題とし、同時に新たな〈哲学〉/〈思想〉のあり方を目指した研究雑誌です。
第一期第一号では、「特集:われわれはいかなる時代をいきているのか」ということで、研究部会のメンバー三人が、それぞれに“現代という時代”の意味を問いつつ、そこからなぜ、いまわれわれが“人間”を問題にしなければならないのかについて論じています。
本誌に込めた基本的なコンセプトについてはこちらをご覧ください。また、以下のリンク先からは全文をPDFで見ることができます。興味を持たれた方は、ぜひ一度覗いてみてください。
『現代人間学・人間存在論研究』 第一期 第一号
特集 われわれはいかなる時代を生きているのか
- 『現代人間学・人間存在論研究』発刊によせて
- 『現代人間学・人間存在論研究』第一号のための序(上柿崇英)
- 現代人間学への社会的、時代的要請とその本質的課題―「理念なき時代」における〈人間〉の再定義をめぐって(上柿崇英)
- 時代に居合わせる人間と思想―〈存在の価値理念〉についての人間学的考察(増田敬祐)
- すべてが技術化するこの世界で他者はなお畏怖され得るのか―現代情報‐技術社会の病理と救済について(吉田健彦)
なお、拙著の「現代人間学への社会的、時代的要請とその本質的課題―「理念なき時代」における〈人間〉の再定義をめぐって」では、現代という時代を「理念なき時代」と捉えるとともに、現代人の〈生〉の現実として、著しく進行する〈生の自己完結化〉と〈生の脱身体化〉を指摘し、それがもたらす「関係性の病理」と「生の混乱」の問題について取り上げています。
なぜよりいっその「自由」と「平等」、あるいは「自立的な個人」を希求するという従来の戦略が、今日においては、新たな社会を構想する潜在力を失っているといえるのか、そしてなぜ今日人間社会が向っている二つの未来がいずれも悲劇的なものとなり、第三の未来を構想することはきわめて困難であるにもかかわらず、現代世代にできることは、依然として人間存在の本質を改めて直視すること、そしてその第三の未来を粛々と希求することでしかないのかということを述べています。
かなり難しい問題を扱っていますが、興味を持ってくださった方は、ぜひご一読いただければ幸甚です。